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【ブログ3】諏訪の御柱、本見立てが中止となりました

1.はじめに
当地では古代より続いている諏訪大社御柱祭(おんばしら、あるいは、みはしらさいと呼ばれる)が大きな行事です。6年ごとに行われる諏訪大社の神事でありますが、平成では4年、10年、16年、22年、28年と5回開催されています。この地域に住むと、御柱祭が人生の中の大きな節目になります。交友関係をはじめとし、御柱年を思い出せばその年に自分がどのような仕事をしていたのか、御柱祭にどのように参加していたのか等、芋づる式に思い出すことができます。
ところで今年、令和2年は、諏訪大社下社では令和4年の御柱祭で使う樅ノ木(もみのき)を最終決定する「本見立て」の年に当たっていました。しかし新型コロナウィルスの感染拡大を防止するため、この「本見立て」が中止となってしまいました。このことはWeb上で見ることもできますが、ここでは地元の新聞記事でご確認ください。来年の伐採に向け、各地区では伐採実行委員会が動き始めたところもあり、計画変更を迫られることになるだろうと予想します。
下社の場合、御柱の木を切り出すところが霧ヶ峰のふもととなります。砥川(とがわ)の支流であります東俣川(ひがしまたがわ)の源流地域です。この流域に降った雨は、山の木を育て、田畑を潤す水となって諏訪湖に流れ込み、更には天竜川となって太平洋に注ぎ込みます。ちょっと強引ですが、このブログは「諏訪湖(環境問題)」というカテゴリーで書かせていただきますこと、ご承知ください。

2.令和4年の御柱祭
次回の御柱祭(正式には式年造営御柱大祭、しきねんぞうえいみはしらたいさいと言う)の日程は次の通りであります。たとえばWeb上で長野日報の記事をご覧いただきたいと思います。

諏訪大社 山出し 里曳き
上社(本宮、前宮) 令和4年

4月2日(土)~4日(月)

令和4年

5月3日(火)~5日(木)

下社(秋宮、春宮) 令和4年

4月8日(金)~10日(日)

令和4年

5月14日(土)~16日(月)

筆者は下社の氏子であり、記憶によれば前回平成28年と同じ曜日のパターンです。即ち、山出し祭は金、土、日の3日間で、里曳き祭は土、日、月の3日間のパターンであります。

3.諏訪大社は4社構成
諏訪大社はまず大きく、上社(かみしゃ)と下社(しもしゃ)に分けて考えてください。更に上社は、本宮(ほんみや)と前宮(まえみや)で構成されます。一方下社は、秋宮(あきみや)と春宮(はるみや)とで構成されます。これで4社となります。
諏訪大社の氏子になるには、住民票を諏訪6市町村のどこかに移す事が必要です。特に申請書を出す必要も、またお金を要求されることもありません。ただしその住民票の地区により、上社に入るのか、下社に属するのかが自動的に決まってしまいます。大雑把に言って、次のように区分して考えてください。

諏訪大社 上社 本宮 諏訪市(新宿寄り)、茅野市、富士見町、原村
前宮
下社 秋宮 諏訪市(松本寄り)、岡谷市、下諏訪町
春宮

 

4.諏訪大社御柱祭
御柱祭は6年毎、申年(さるどし)と寅年(とらどし)に開催される諏訪大社最大の神事と申し上げてよろしいでしょう。前回が平成28年申年の開催でありましたので、次回は令和4年寅年の開催となります。このように御柱祭の開催される特別な年を、地元では御柱年(おんばしらどし)と呼びます。
御柱年の春に、本祭りが開催されます。第2項の通り、4月が山出し祭、5月が里曳き祭です。山出し祭では、切り倒した樅の大木を曳行ルートの中間地点まで曳き付けます。そこに御柱は1ヶ月間安置され、里曳き祭ではその中間地点から各々の社まで御柱を運び、社の4隅に1本ずつ建立します。

区分

山出し 里曳き

曳き出し地点

中間地点

建立

諏訪大社上社

綱置き場

(つなおきば)

御柱屋敷

(おんばしらやしき)

本宮、前宮

諏訪大社下社 棚木場

(たなこば)

注連掛山

(しめかけやま)

秋宮、春宮

上社と下社とで同時にお祭りを開くことはありません。下社は上社の1週間遅れでお祭りが行れます。つまり4月に入ると上社の山出し祭があり、それから1週間遅れで下社の山出し祭が開催されます。5月の連休中は上社の里曳き祭、連休明けに下社の里曳き祭という要領であります。過去の御柱のパンフレットより曳行の地図を画像にしておきます。引き出し地点と中間地点(御柱休め)には赤色の矢印を、諏訪大社の社は赤丸で囲っておきました。下社と上社とで、全く別のお祭りのように見えると思います。

4月と5月の本祭りが終わりますと、7月や8月には諏訪の各地区で夏祭りが催されます。そして秋の収穫の時を迎えると、今度は各地区の鎮守様の御柱祭が開催されます。道祖神にも、地区の御柱が4本建ちます。各地区の”ミニ御柱”では、子どもたちが主役です。こうして御柱年は1年中、諏訪一円は何らかのお祭りで賑わっていることになります。御柱年は本当に、「生きた」という実感を持ちます。

5.奥山の大木、里にくだりて神となる
ここからは申し訳ありませんが、下社に限ったお話とさせてください。理由は、筆者が上社の御柱に詳しくないからです。
下社の場合、秋宮と春宮があり、それぞれに4本の御柱が建立されています。御柱は御柱年の3月に「御柱休め」という行事でお宮から消えます。そして5月に新しい柱が建ちます。御柱年の3月下旬から5月上旬を除けば、それ以外の時期には必ず御柱が建っているというわけです。
お宮の鳥居をくぐり石段を上って行きますと、先ず神楽殿が目の前に現れます。その後方にあります拝殿をお参りした時に、右手に見えるのが「一の柱」で最も太い御柱です。左手に見えるのが「二の柱」でその次に太い御柱です。「二の柱」の奥の方に「三の柱」が見えますが、そこは普段、立ち入り禁止のエリアとなっています。意識して見ないと、わからないかも知れません。同様に「一の柱」の奥の方に「四の柱」が建っていますが、「三の柱」と同様に近くに寄って見ることはできません。各お社で、4本の柱のうち最も細いものが「四の柱」となります。以上のことは、秋宮と春宮で共通のことであります。
下社では、秋宮と春宮を合わせて合計8本の御柱が建立されています。各お社で太さによる順位があることを説明しましたが、秋宮と春宮ではどの柱が最も太いのでしょう?実はこれら8本は、太さにより序列が付いています。即ち
最も太いのが秋宮の一の御柱
その次に太いのが春宮の一の御柱
その次に太いのが秋宮の二の御柱
このようにして順序づけられ、
最も細いのが春宮の四の御柱
となります。
樅ノ木の樹齢ですが、「春宮の四」で100年足らず、最も太い「秋宮の一」だと200年近くの大木です。よく観光客の方から「あとどのくらい、御柱の御用材がもちますか?」と聞かれることがありますが、100年(1世紀)先、200年(2世紀)先のことは人間には良くわかりません。下社の場合ですと、東俣国有林内で山の土の上に落ちた樅ノ木の種が200年すると秋宮の一の御柱になる可能性がありますし、場合によっては途中で立ち枯れてしまうこともあります。この辺一帯は火山であり、がれきの上に薄い土の層があり、樅ノ木はその上に根を張って育ちます。皆目見当がつかないわけではなく、今立っている樅ノ木がデータベース化されており、あと100年くらいは下社の御用材は調達可能であろうと言われています。
今の時代であっても、大木は貴重なものであります。ましてや、古の頃(万葉集の頃?)ならば尚更のことでしょう。巨木信仰があってもおかしくないと思います。ご先祖様の霊が山に帰り、多くの霊が取り付くと樅ノ木を大木に育てると想像します。御柱祭と巨木信仰とが結びついていると筆者は考えております。
秋宮や春宮があるところが「里」、樅ノ木が育っているところが「奥山」、そして奥山と里の間にあるのが里山と大雑把に定義できます。樅ノ木の大木は奥山で育ち、里山を通って運ばれ、里に着くと神の柱となるのです。有名な木遣り歌「奥山の大木、里にくだりて神となる」そのものであります。

6.伐採と見立て
下社の場合、6年毎に8本の柱(樅ノ木)が必要であることを理解していただけたでしょうか?
実際にはどのような神事(行事)を経て、切り出されて行くのでありましょうか?令和4年の御柱祭の場合、新型コロナウィルスの騒動がなければ次のようなスケジュールで進むはずでした。

神事 実施月(カッコ内は状況)
仮見立て 令和元年5月(実施済み)
本見立て 令和2年5月(中止)
伐採 令和3年5月(予定)
本祭り 令和4年(詳細日程は第2項による)

簡単に申し上げますと、8本の候補木を確認するのが仮見立て、それを決定するのが本見立て、斧と鋸で切り倒すのが伐採です。今回は本見立てが新型コロナウィルスの影響で中止となりました。第1項の北島宮司の発表からしますと、令和元年の仮見立ての候補木が本見立てで承認されたという手続きとなりそうです。
これで本コラムを終えたいと思います。最後に令和4年の御柱に使われる樅ノ木は、どのくらい太い木でありましょうか?これも昨年の新聞記事から引用させていただきます。目通り周囲ですから、人がその気の前に立った時の目の高さで、どのくらいの太さがあるのかを測定した結果を示しています。人が手をつないだ姿を想像してみてください。
秋宮の一の柱はさすがに大きく、よって重量もあります。この大木を人力で引っ張るには、それなりの人数が必要です。諏訪の氏子たちは「俺が行かなければ御柱が動かない」と言って祭りに参加します。

一刻も早く新型コロナウィルスが収束するのを願っています。ここまで読んでくださった読者の皆様にも諏訪大明神のご加護がありますように。

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