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ブログ12 ドイツ語文法を通して考えた「ルール」作り

0.はじめに
社員としては最高齢に属する者からの投稿となります。このブログではドイツ語技能検定試験に挑戦したこと、またドイツ語文法を起点に私の過去の経験について考え直したことを報告します。ドイツ語を習われている方からすると当たり前と思われるでしょうが、文法がきっちりしていることは驚きです。あの公文(くもん)も、NHKラジオ講座に「公文式ドイツ語教室」の広告を出しています。

私の若い頃の経験を語ってしまいました。昔のことを語るというのは、年寄りの癖でしょうか?ちょっと古臭い内容を含んでいると思いますが、昭和の香りを楽しんでいただければ幸甚です。

 

1.ドイツ語とのかかわり
私は第2外国語として、もう何十年も前にドイツ語の勉強をしていたことがあります。しかしその言語のことを、すっかり忘れてしまっておりました。年を取ってからのことになりますが、もう一度ドイツ語を学び直したいと思うようになった理由に2つがあります。

一つは、確か前々回の御柱祭であったと記憶していますが、私たちの柱にドイツからの放送クルーが付いたことがあります。ヨーロッパ本土に足を踏み入れたことのない私ですが、ドイツ人に対して「森の民族」というイメージがありました。昔、酸性雨でドイツの森がダメージを受けているという記事を読んだことがあります。だから「木の文化」というところで、日本との共通項を感じていました。

もう一つが最近、当社の作業帽のデザインが変更になったことと関連しています。この帽子にはドイツ語で「ことわざ」が入っています。
Wo ein Wille ist, ist auch ein Weg.
リンカーン大統領の名言「意志あるところに道は開ける」
Where there is a will, there is a way.
に対応するものでしょうか?会社名のStahlもドイツ語であるし、いよいよ当社社長もドイツ語を意識した活動を考えたのかと思いました。社長に負けまいと、私も昔習ったドイツ語をもう一度やり直したいという気持ちになったのです。

つまりドイツ語学習の直接のきっかきは社長のデザインした帽子であり、その前段には日本にやって来たドイツ人(放送クルー)と「何も話せなった。」という苦い思い出があったということになるでしょうか。

 

2.名詞に性があるって、どういうこと?
外国語を勉強し、その国の人たちと話ができたら素晴らしいと思います。しかし私のような人付き合いの下手な人間にとっては、日本語でも外国語でも、余り差がありません。日本人でもお会いしたいけれども、雲の上のような人たちがいます。外国人だからと言って、たまたま出会った方が私の追い求めていた人とは限りません。それでも外国語を学びたいという気持ちになるのは、私の場合、その国の文化に深く触れたいという想いがあるからです。ある国または民族を知ろうと思ったら、その言語を学ぶというのが一つの方法だと考えます。

ドイツ語を学び始めて最初に驚くのは、名詞に性があるということです。ヨーロッパ言語の名詞には男性と女性という性を持つものが多いと聞いていますが、ドイツ語の名詞は男性と女性に加えて中性もあって、3つの性に分類されています。何のためでしょうか?私たちの身近なところの言語を見ますと、日本語にも、英語にも、中国語にも名詞に性がありません。学校で学ぶ漢語にも、その名詞に性はありませんでした。

たとえば「私は車を1台持っている。それは小さい。」という日本語をドイツ語で表現してみましょう。2つの例文を用意します。最初は「車」に、中性名詞である Auto を使ってみましょう。この単語は、英語の automobile を連想させます。
Ich habe ein Auto. Es ist klein.
英語で直訳すると
I have a car. It is small.
となります。今度は「車」に、男性名詞である Wagen を使ってみましょう。フォルクス・ワーゲンのワーゲンです。
Ich have einen Wagen. Er ist klein.
英語で直訳すると
I have a wagon. He is small.
となります。男性名詞を受ける代名詞は「彼 er」であり、同じ論理で女性名詞は「彼女 sie」という代名詞が受けるのです。中性名詞は「それ es」が受けます。NHKのドイツ語講座の中である日本人講師が、「Er でなくて es で受けたら、ドイツ人に通じますか?」というような類いの質問を投げかけたことがあります。その時、二人のドイツ人ゲストは否定的な回答をしました。

同じくラジオ講座で昔聞いた話になりますが、ドイツ人の子どもたちも、その名詞が男性なのか女性なのか、あるいは中性なのかを、覚えなければならないそうです。その時のドイツ人ゲストは、自宅の部屋に単語を貼って覚えたと語っていました。日本人の漢字練習を連想させる光景です。因みに当社の名前、 Stahl は男性名詞です。鉄鋼(英語で steel )は男性っぽいイメージを私は感じますが、読者の皆様はいかがでしょうか?

 

3.ドイツ語にはルールブックが必要?
ドイツ語を習って行くと、現代人が編み出したコンピュータのプログラミング言語を連想してしまうことがあります。とにかく文法が数学の公式のようにしっかりしていて、それを頑なに守っている民族のように感じてしまうのです。

簡単に民族と言ってしまいましたが、ゲルマン(英語のGermanyをローマ字読みしたような発音)民族がどのような人たちなのか、私は調べたことがありません。学校の世界史で「ゲルマン人の大移動」が登場したのを覚えているくらいです。ところでドイツ語圏というと、ドイツ連邦共和国(かつての西ドイツと東ドイツの両方)、オーストリア、それにスイスの大部分が思い浮かびます。より詳細を知りたい方は、例えば上智大学言語教育研究センターにアクセスし、(ホーム)>上智で学べる外国語>ドイツ語>ドイツ語圏の紹介 と進んでみてください。ドイツ語を話している民族がそのままゲルマン民族ではないように予想しますが、どのような人たちがドイツ語の文法を守っているのかが大変気になります。

ヨーロッパ言語には名詞の前に定冠詞や不定冠詞が付きます。

定冠詞とは英語で言う  the (母音で始まる名詞の前では発音が変わるが、書いた文字としては変わらない)のことです。ドイツ語を学び始めると直ぐに、定冠詞の格変化を覚えます。日本語や中国語には定冠詞がありませんが、ドイツ語は名詞の性に対応した定冠詞を持っています。男性だと der 、女性だと die 、中性だと das です。それに複数形が、名詞の性に関わらず die となります。更に面倒なことに、その単語の役割によって1格、2格、3格、4格と定冠詞が格変化するのです。大雑把に言って1格は主語、2格は所有格、3格は間接目的語、4格は直接目的語に使われることが多くあります。

不定冠詞とは英語で言う a(母音で始まる名詞の前ではanに変化)です。今は定冠詞の話をしましたが、不定冠詞も語尾変化します。

モーツァルト(作曲家: ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト)の作曲したセレナーデに Eine kleine Nachmusik があります。日本語ではアイネ・クライネ・ナハトムジークとドイツ語読みそのままで通じます。この楽曲のタイトルを紐解いてみましょう。
・ 「音楽」Musikが女性名詞で、それに「夜」Nachtが付いた Nachtmusik も女性名詞です。
・ これに不定冠詞(女性名詞の前だとein がeineに語尾変化)が先頭につきます。
・ 更に形容詞の「小さい」kleinが、不定冠詞と女性名詞の間に挟まれてkleineと語尾変化しています。第2項で用いたドイツ語の例文も、このkleinを意識して用意しました。

今は単語のことをお話しましたが、文章の形になりますと更に動詞も人称(1人称単数、2人称単数、3人称単数、1人称複数、2人称複数、3人称複数)によって語尾変化します。ルールを覚えるということに関しては、垣根の高い言語であるように思います。

「ドイツ語をという言語は、なんて文法が厳格なんだろう。」と驚嘆してしまいます。言葉を使うという日常の行動が、文法というルールを理解し、そのルールに従うという訓練をしているようにさえ思えます。ドイツ語圏の赤ちゃんは、「この世にはルールがある」ことを学んで行くのでしょう。もちろん文法など意識せずに言葉を話し始めるとは思いますが、どこかで自分の頭の中を整理する時が来ると思います。

ルール作りの典型は私にとっては、ISO9001 です。その影響力が身に染みた読者の皆様も多いように推測します。品質マネジメントシステムISO9001が誕生し、それが環境問題に適用されてISO14001が生まれました。今や労働安全衛生の分野にも進出して来て、ISO45001が世界を呑み込んだような形になっています。環境化学物質でもヨーロッパが先行しました。RoHS指令をいち早く制定し、環境問題でも世界をけん引しています。もっともISO9001はイギリス人の発明であり、ドイツ人ではないという意見もあるでしょうが、「ヨーロッパ人はルール作りに長けている」というように幅広に解釈していただきたいと存じます。
※ 当社はISO規格の認証を取得をしていません。

 

4.ルール作りを他人に任せると、不利益を被ることがある
そこに行くと、日本人はルール作りが苦手な民族のような気がします。「こと」をはっきりさせ過ぎると、角が立つように感じてしまう所があるのでしょうか?他国で作ったルールであっても、それを自国に持ち込んで守ることに長けているように感じます。

私がまだ若い頃、製品安全(労働安全ではありません、販売する商品が安全かどうかを評価し、審査する仕事です)の仕事に携わったことがあります。当時勤めていた会社で定期購読している冊子があり、たまたま洗濯機の製品安全に関する記事を読みました。「規格」あるいはルールの凄さを思い知らされ、生涯忘れることのできない事例として頭に焼き付いています。ちょっと話は長くなりますが、お付き合いください。

当社のホームページの読者の年齢を推測するに、ほとんどの方はご存じないでしょうが、昔は石鹸(せっけん)と洗濯板(せんたくいた)を使って洗濯をしていました。いわゆる手洗いです。ネットで調べると、今でも洗濯板を販売している会社があるようです。下に画像を載せておきました。

そんな日々の暮らしに田舎でも、電気洗濯機という文明の利器が、テレビと一緒になって一般家庭に入って来ました。テレビはもちろん、白黒のブラウン管方式です。洗濯機はプロペラが洗濯槽の下部に付いている1槽式でした。そもそも脱水の機能が付いていませんでした。洗った衣類は、洗濯槽の側面に付いている2つのゴムローラーの間に挿入します。鉄鋼の圧延の要領で付属のレバーを廻すとローラーが回転し、濡れた衣類がプレスされたように薄板形状で洗濯槽の外に排出されて来ます。絞った水は洗濯槽の中に戻るという合理的な仕組みでした。

洗濯機の普及と時を同じくして粉末の洗剤が出回り始め、下水などなかった当時は、諏訪湖に流れ込む川が生活排水で一気に汚れて行くのでした。私たちの親の世代は諏訪湖で泳いでいたと話をしていましたが、私たちが子供の頃に記憶している諏訪湖は既に、異臭を放つ汚れきった諏訪湖となっていました。流れ込む川も、川底の見えないドブ川でした。
※ 諏訪湖の浄化を進めるため、私たちの親の世代は下水道の普及に力を入れました。諏訪湖の浄化活動は、私たちの世代にも受け継がれていますし、今後も私たちの子ども世代が担って行くでしょう。諏訪湖の浄化活動については、他のブログでも登場しております。まだ泳げる諏訪湖にまでは戻っていませんが、諏訪湖に流れ込む河川には魚が泳げるようになっています。また当社は諏訪湖の浄化を願って、有志が諏訪湖マラソンに参加しています。

さてその後、日本では2槽式洗濯機が発明されました。これは洗濯槽と脱水層とを分離した設計の洗濯機で、一般家庭に急激に普及して行きました。これは1人暮らしにはとても重宝する電化製品でした。「洗う」、「脱水する」、「干す」という3工程を併行して、流れ作業でできる優れものであったからです。1槽目の洗濯を終えたら2槽目に衣類を移して脱水。脱水している間に次の洗濯を1槽目で開始する。脱水を終えた洗濯物をゆっくりと干して戻ると、洗濯が終わっている。2槽目で脱水してから干せば、たくさんの洗濯ものも短時間で片付けることができました。だから「洗濯物は溜めておいて、一度に片付ける」が私の生活様式となりました。

それがIEC(電気製品の安全規格を担当する世界機関で、日本は明治から参加しています!電気安全以外はISOが担当するという仕組みに、今の世の中はなっていると思います。)規格で
★★★ 2槽式洗濯機は安全上の問題があるので、1槽式(現在のドラム式)に変更しなければならない ★★★
ということが決定されました。「2槽式が危なくて1槽式が安全?なぜ?」日本の2槽式洗濯機は東南アジアを中心にそれなりの世界シェアを抑えていたと思いますが、ヨーロッパと同じ1槽式での競争を強いられることになって行くのです。つくづく、「規格を作る側に回らないと不利益を被る」と思い知らされた事件でした。

当社に於いては、作業標準書を社員の発案で改訂することができます。この権利を行使し、標準化を進めてもらいたいと私は願っています。しかしながら、「その通りにやるので、やり方を決めてください。」と受け身になっている社員がまだ多いように感じています。

 

5.ドイツ語技能検定試験の結果
さて本題に戻りましょう。学び直したドイツ語でありますが、やはり何らかの目標があると勉強が進みやすいと思います。語学の勉強は、日本ではいろいろと試験体系が整っていることにありがたさを感じます。NHKラジオのみの独学者であっても、自分の成長をある程度客観的に見ることができます。

学校の勉強は試験日程が予め決まっていて、本人の準備状況に関わりなく、学校の都合で試験がやって来ます。試験は強制的に受けなければなりません。そこに行くと語学の検定試験は、受験者の都合で受けられることに最も魅力を感じます。ドイツ語の場合、公益財団法人ドイツ語学文学振興会でドイツ語技能検定試験(略して「独検」と呼ぶらしい)を年に2回、夏と冬に実施しています。私は奮起し、6月27日開催の、2021年の夏の試験を受けることにしました。試験の難易度を知ろうと、「独検」のサイトを訪れると過去問題が載っていました(HOME > ドイツ語学習 > 過去問題サンプル)。一番初心者向けの5級でも「合格は大丈夫かな?」と心配になり、その級から挑戦することにしました。長野県の場合、試験会場は信州大学松本キャンパスでした。この種の試験を受ける楽しみの1つに、普段では入ることのできない施設に入れることがあります。

結果は、私自身が驚く満点合格でした。ドイツ語の勉強は、NHKのインターネットラジオで「まいにちドイツ語」の番組を聞くことしかできていません。試験直前には、会社の昼休みに「まいにちドイツ語」のテキストを読んだりしてもしていました。もしドイツ語の勉強がこのまま継続できるようであれば、次回は4級に挑戦してみたいと思います。それが来年になるか、あるいは再来年になるが、いつ受けるかは私が決定することができます。焦る必要はないとは思いますが、難敵はアルツハイマー病ではないかと予想しています。寿命という時間との闘いということになるでしょうか?

 

6.お詫び
私が製品安全の仕事に携わっていたのは、10年くらい、ごくわずかな時間でありました。電気部品の設計とその品質保証でした。それなのに第4項のようなブログを書いてしまいました。当時は、日本の製品安全の規格が『電気用品取締法』という法律から『電気用品安全法』に切り替わった頃でもありました。製品安全を政府が取り締まるのではなく、民間に任せようという、官から民への動きがありました。電気用品安全法の審査に外国企業も参加して来て、その1社がドイツ(当時は西ドイツ)のラインランド州にあるTUVでありました。

それから大分時間が経過してしまいました。製品安全に関しては、今の世の中がどのようになっているのか疎くなってしまっています。今回このブログを書くに当たり、ネットで「2槽式洗濯機」を検索してみましたら、「日立製作所の青空」がヒットしました。

今でも2槽式洗濯機を作って販売している日本企業があることが分かり、私の解釈が誤っていたのかも知れないことをお伝えしておきます。本件に関し、正確な情報が得られましたら逆に、ぜひ教えていただきたいとお願いし、このブログを閉じることにします。

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