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ブログ6 新型コロナと体温測定

新型コロナウイルスの感染とその対策で、世界中で相当な人的エネルギーとお金が投入されております。日本では失業率も上昇しており、先行きが不安になります。でもこのような時季でなければ、自分の体温と向き合うことはないでしょう。当社社員に対しては、出社前の体温測定をお願いしております。4月より始めた活動でありますが、当社での取り組みをご紹介したいと思います。

~ 第3波に備えて、シュタールでの取り組み ~

1.第2波を新規感染者数で確認
2020年も9月に入りますと、新型コロナウイルス感染者は全国的には減少傾向にあります。日本政府は第2波の終息を予想していると報道されております。日本経済新聞社の運営サイト「チャートで見る日本の感染状況」にちょうどいいグラフがありましたので、転載させていただきます。最新情報は、このサイトで確認ください。

首都圏とその他の地域の積み上げの棒グラフになっています。右のグラフでは若干見にくいのですが、全国の感染者数が灰色の上端の位置で示されます。グラフを眺めますと二つ目の山、つまり第2波が形成されつつあることがわかります。

同じサイトに、都道府県別にみられるグラフもありました。ヒートマップと言うグラフで、赤色が濃いほど人数が多いことを示しています。第1波と第2波の状況が俯瞰できるように思います。確認しますと当地長野県(関東・甲信越の一番下です)は、第2波がこれから始まりそうな雰囲気のグラフとなっています。


    

2.新型インフルエンザのこと
テレビの報道番組によりますと、ウイルスと人類とは長いお付き合いのようです。我々の遺伝子にもウイルスの遺伝子が取り込まれて、有用な働きをしているものもあるそうです。

最近の感染症の流行についてWebで調べましたので、次の表をご覧ください。

感染症名称 流行期 特記事項
スペイン風邪 1918~1920
SARS 2002 重症急性呼吸器症候群
新型インフルエンザ 2009
MERS 2012 中東呼吸器症候群
新型コロナウイルス 2020 流行中、COVID-19
  • SARSは中国での発生。当時、日本から中国に赴任している人たちを帰国させるべきかどうか、大きなニュースになったように記憶しています。コウモリから人へのウイルス感染と言われています。
  • MERSは中東での発生。中東に進出している日本企業が少なかったこともあり、私の周囲ではSARSほど大きな騒ぎにはならなかったと記憶しています。ラクダから人へのウイルス感染と言われています。

実は私は、2009年に流行した新型インフルエンザに罹った経験があります。シュタールに転職して来る前の経験でありますので、ご注意ください。新型ではありますが、インフルエンザと言いながら発症したのは夏であります。当時私は、中国の深圳へ2週間ほど出張しておりました。その出張から戻ったタイミングで、定期の健康診断が会社で行われました。その時、健康診断で来社されていた看護師より、「あなた、顔が熱っぽいですよ。」と言われました。健康診断を終えて直ぐに会社の体温計で体温を測ったところ、確かに発熱していました。体が熱いように思い、慌てて会社近くの内科の開業医に駆け込みました。受付を済ませると、診察室のような個室に案内されました。診察の順番が廻って来て医師に診ていただいたところ、検査結果がその場で出ました。「新型インフルです。」と。診察を終え、会社に新型インフルエンザに感染したことを伝え、私は自宅に直帰して休養しました。食事とトイレ以外は、部屋から出ないように心掛けました。
新型インフルエンザ感染を地元の区長に報告しましたら、敬老の日近くに予定されていました地元敬老会が即刻中止となりました。その年、私は地区の役員で、敬老会に関わっていたのであります。今考えると、何とスピーディな対応であったかと驚いてしまいます。私が新型インフルエンザから症状が回復したのは、敬老会の開催前でありました。会社に出社可能になった時、私が最初にしたのが敬老会予定会場の除菌でありました。昼間、ドアノブを拭きに行ったことをよく覚えています。晴れの日で、太陽がまぶしかった記憶が残っています。そして区長に敬老会の中止を取り消すようにお願いしましたが、区長の方針は頑として変わりませんでした。敬老会の中止は私の地区では前代未聞のことであり、「中止を決断した区長は、大したものだ。」と、新型コロナウイルスが流行中の今だからこそ尚更、尊敬してしまいます。

このようなことを思い出しますと、「新型コロナウイルスも開業医で検査ができれば、今の生活ももう少し楽になるのになあ。」としみじみと思う次第であります。

 

3.体温の測定結果から統計値を求めてみたら
ところで今私は、当社シュタールで衛生管理者の仕事をしています。
まだ長野県で、新型コロナウイルスの感染者が少ない頃のことであります。地元のテレビニュースで確か、「37.2℃の発熱があるのに、感染者を働かせていた。」と、会社を非難するような口調の報道がありました。会社側からは「本人が、平熱が元々高いと言うので」という理由で働かせていたとのことでした。このニュースを聞き、衛生管理者としてこのような事例にどう対応すべきであろうかと、悩んでしまいました。

当社は4月より「健康チェックシート」を全社員に配布し、体温の測定と体調の異常有無確認を求めています。その中では、
☆☆☆ 体温が37.5℃以上の場合は、会社に連絡して休んでください ☆☆☆
としてありました。
上の報道を受け、順次、次のような対応をして行きました。

1)「健康チェックシート」の表現変更
7月の結果を記録する「健康チェックシート」の作成時、上記表現を次のように変更しました。
★★★ 平熱よりも高い(例:37℃以上)場合は、出社前に会社に電話を入れてください。 ★★★
社員からの電話相談を受け、出社を許可するのは工場長または部長であります。しかしながら、これらの人たちを具体的に援助する術は、用意することができませんでした。

2)体温管理の目論み(もくろみ)
7月の定例安全衛生委員会で、
☆☆☆ 個人別に体温の異常値が設定できないか? ☆☆☆
ということを提案しました。その時は気楽に、体温の測定値から平均値Xbarと標準偏差σを求め、
Xbar + 3σ
というような計算式で体温の異常値を設定できるのではないかと踏んでいました。工業製品の社内規格、あるいはお客様との仕様取り決めで使われる数式の代表的なものであるからです。

定例安全衛生委員会で「やってみたら?」という意向が得られたので、4月と5月の個人別の体温測定結果を見せていただきデータを入力しました。入力しながら、まず体温のばらつきが大きい事に気づきました。社員間のバラツキも大きいし、同じ社員であっても体温が大きく変動する方もいらっしゃいます。工業製品だったら、到底安定している工程とはみなせないようなバラツキの程度でした。「データ入力を中止して、現場を見に行け。」というレベルです。

3)平均値
統計値の信頼性を高めるため、データ数が30以上(n≧30)の社員を対象に分析を進めました。まず平均値Xbarを社員別に求め、ヒストグラムにしてみましたた。グラフは、意図的にぼかしを入れてあります。明瞭には読み取れないようにしてありますこと、データの性格上ご了承ください。

平熱をこの平均値で定義することにしました。

平熱が何と35℃代の方が10%以上もいらっしゃいました。グラフでは、左側になだらかに尾を引いている部分に当たります。会社出社前に体温を測定しないと出社可否が判断できませんので、体温測定は朝方になります。寝起き直後であるので、体温が低いのでしょうか?
他方、平熱の最も高い社員は36.8℃でありました。社員間の平熱のバラツキに改めて驚いた次第です。

4)標準偏差
次に、社員別に算出した標準偏差σをヒストグラムにしてみました。ヒストグラムの形状は、離れ小島タイプとなりました。日々、体温が大きく変化する社員が何人かいらっしゃいます。

 

4. 平熱を知ったうえでの体温測定の継続
ここまでの解析結果を受け、8月の定例安全衛生委員会への準備を開始しました。第3項で得られた社員別の平均値Xbarと標準偏差σから、社員別にXbar+3σを求めてみました。この値を異常値とし、その体温を越えた場合は会社に電話するというルールにするという目論みを、実際の検温値を用いて検証してみました。そうすると相当な頻度で「熱がありますが、今日は会社に出てもよろしいですか?」というお伺いの電話が来ることがわかりました。

それではXbar+4σを会社に電話する体温(つまり「高熱」)として定めたらどうかと検討してみました。大体の人は会社に電話をしなくて済むようになります。しかし「高熱」の最大値は38.4℃にもなってしまい、これだったら以前定めていた「37℃を越えたら会社に電話して!」というルールの方が”まし”のように思えてしまいます。

結局8月の定例安全衛生委員会で審議していただき、次のように決めました。
1)
体温のデータ数が30以上の社員に対しては平均値をフィードバックし、「いつもより熱がある」と判断したら会社に電話をしてもらう。平熱も併せて報告してもらうことで、電話を受け取った工場長または部長は「平熱より1℃以上高いかどうか?」を判断目安にして、出社許可/不許可を指示します。
2)
体温のデータ数が30に満たない社員は、従来通り、37℃を目安に出社前に電話をしてもらい、工場長または部長に相談します。また9月分の「健康チェックシート」に体温が記録できたところで10月に提出してもらい、衛生管理者(私)が平均値を求めて平熱を本人にフィードバックします。

 

5.新型コロナウイルス第3波に備えて
今年の夏は、熱中症の患者と新型コロナウイルス感染者との判別が難しいという問題が発生しました。どちらも「体温が高くなる」という共通の症状が発生するからでありましょう。
これから冬に向かうと、風邪やインフルエンザが流行する季節となります。これらの病気の症状もまた発熱を伴います。よって新型コロナウイルスと似ていて判別が難しい、医療機関泣かせの問題となることが予想されます。更には、新型コロナウイルス感染の第3波と重なる可能性もあります。

いつもの年ならばインフルエンザのワクチン接種を受けない方たちも、今年は予防接種を受けるという動きも予想できます。もちろん衛生管理者としては社員全員が接種してくれればありがたいことですが、気がかりが2つあります。1つはワクチンの供給量です。当社では早めの予防接種に心掛けているので、今年も多分、希望者は全員接種を受けられると思います。しかし全国的に見た場合、ワクチンの供給量は足りるのでしょうか?新型コロナウイルスに対するワクチンばかり話題になっており、心配なところです。2つ目はワクチンが狙うインフルエンザのタイプです。これは毎年話題に上がることであり、「流行するインフルエンザのタイプの予想が当たる」ことを祈るしかありません。

報道によりますと、新型コロナウイルスに感染しても無症状の人もいらっしゃるようです。体温測定だけでは感染を判断できないので、味覚や体のだるさといった自分の体調を意識的に確認することも重要となります。PCR検査の充実も行政にお願いしたいところでありますが、検査には必ず精度の問題が付いて回ります。感染していないのに陽性、感染しているのに陰性という誤判断はつきものでありますが、検査の容易性と正確性の両方が同時に解決できるような検査方法が登場することを期待します。

体温測定や体調確認のほかに、感染経路が追求できるように外出先を記録するという活動も重要と考えております。この行動履歴の管理は、工業製品の言葉を使うと「トレーサビリティが取れる体系・仕組みを作り、その記録を残す」という活動に通じることだと思います。ものづくりに携わる会社であればこその発想で、今期の全社目標の1つ、「新型コロナ感染者ゼロ」を達成したいと考えております。

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